【エピソード19】アルバムレビュー『安全地帯Ⅳ』安全地帯
【景品表示法に基づく表記】本サイトのコンテンツには、商品プロモーションが含まれている場合があります。


カイエダです。
1985年の冬、安全地帯が発表したアルバム『安全地帯Ⅳ』は、まるで一編の短編映画を観るようなドラマティックな展開を感じさせる珠玉の名盤です。
時代背景やKINGのスキャンダルも重なり、時代を象徴するロックバンドになった安全地帯。
この記事では、当時の背景や制作エピソード、そして音楽的魅力とその反響を、今回も1ファンの視点でひも解いてみたいと思います。
この記事の目次 [表示]
『安全地帯Ⅳ』概要
安全地帯による4作目のオリジナルアルバム『安全地帯Ⅳ』は、1985年11月24日にKitty Recordsよりリリースされました。
前作『安全地帯III〜抱きしめたい』から約1年ぶりの新作であり、作詞を松井五郎、作曲を玉置浩二、プロデュースを星勝と金子章平が手がけています。
レコーディングはKRSスタジオとキティ伊豆スタジオで行われました。
安全地帯は同年2月12日、2月13日に初の日本武道館公演を2日間連続公演として実現。さらに2月17日、2月18日には大阪城ホールの2日間連続公演を敢行、4月25日にはこの2会場でのライブの模様を記録した初のライブアルバム『ENDLESS』をリリースしています。
本作の前にリリースされたシングルのうち「熱視線」は収録されず、先行シングルは「悲しみにさよなら」および大王製紙「エリス」のコマーシャルソングとして使用された「碧い瞳のエリス」が収録されました。
メロディアスな楽曲とロマンチックな歌詞の絶妙な融合により、安全地帯の音楽スタイルが完成した一作と称されます。
本作はオリコンアルバムチャートで初の第1位、さらには1986年度年間1位を獲得。
安全地帯最大のヒットアルバムとなり、後年にも多くのランキングやキャンペーンで高く評価されています。
バブル期に差し掛かっていた時代を反映したように。安全地帯の絶頂期
本作は1985年にLP、カセット、CDの3形態でリリースされ、シングル「悲しみにさよなら」と「碧い瞳のエリス」が大ヒット。
さらに、「デリカシー」「ガラスのささやき」がテレビドラマの主題歌・イメージソングとして使用されるなど、メディア露出も多く、グループの人気を不動のものにしました。
『ザ・ベストテン』では両シングルが連続して第1位を獲得し、NHK『紅白歌合戦』初出場も果たしました。
贅沢でありながら繊細な音作りと、KINGの深みのあるボーカルは高く評価され、音楽ファンの間でも名盤として語り継がれています。
リリース以降も幾度となく再発され、35周年記念盤としても復刻されるなど、長年にわたり愛され続けている作品です。
KINGがマスコミに追われる存在に
一方で、多数のヒット曲をリリースした当時のKINGは生活が激変して、著名な存在となってしまったことで窮屈さを感じていたようです。
ストレスすごかったんでしょうね。
そんななか同年2月には女優の石原真理子さんとの不倫関係が報道されてしまいました。
これは…小学生ながらにかなりセンセーショナルでした。
当時KINGと石原さんの不倫が報道されたことにより、思っていた以上にそれまでの歌にリアルな質感がもたらされた、と松井さんは自著でおっしゃっています。
通常であればそのようなスキャンダルによって、ファンが離れていくところを、KINGに関しては歌詞通りのイメージの私生活が判明したことでよりリスナーから支持を得たということでした。
これは…。私もそう書いてましたが、魅力の一つになっていたんですよね。
ある意味、今の時代では考えられないことですが、当時はまだ、それが許されていたんです。
返って「モテる」「セクシー」「かっこいい」というイメージがついた感じがします。
『安全地帯Ⅳ』収録曲&コメント
全曲
作詞:松井五郎
作曲:玉置浩二
編曲:安全地帯、星勝
レビューを書くにあたり味わった失恋感
出戻ってからこうしてレビューなどを書くにあたり、作詞の松井五郎さんがどういうところからインスピレーションを受けて安全地帯Ⅳに含まれる曲の作詞をしたか、というのを知ることになりました。
Wikipediaに詳しく掲載されています。
…もうこのアルバムはイコールKINGの若かりし頃の恋愛顛末記みたいなものなのか…!という感想を私は持ちましたね。
何度目かの失恋をした気分になりました笑
- 夢のつづき
…KINGのファルセットが美しいうっとりするバラード曲。
安全地帯で、バラード曲がアルバムの1曲目になることはかなり珍しいのではないでしょうか。
何かミステリアスな物語の幕開けのような、ドキドキを誘う役目のある素敵な曲です。 - デリカシー
…小学生の頃、このアルバムの中で一番好きな曲でした。イントロが面白いですよねこの曲。
今聴くと、KINGと女優さんの出会いを匂わせるような雰囲気ありますね…。この曲もファルセットが美しいです。
TBSドラマ「親にはナイショで…」の主題歌です。以下テレビドラマデータベースさんからの引用です。安田演じる謎めいた雰囲気を持つ女子大生を中心に複雑に絡み合う恋模様を80年代当時の世相、核家庭の有様を交えてシニカルに描く。安田が演じる謎めいた雰囲気を持つ女子大生を中心に、親にはナイショにしたい複雑に絡み合った恋模様を80年代当時の世相、核家庭の有様を交えてシニカルに描く。ドラマの舞台は東京・秋葉原。物語は、女子大生・えり子(安田成美)と彼女が家庭教師をつとめる15歳の少年との恋模様を軸に、えり子に思いを寄せる秋葉原駅員・公路(柳沢慎吾)らが絡んだ恋愛模様が展開。
このドラマ見ていたのですが全く内容覚えてないですね…。 - 碧い瞳のエリス
…「青い」ではなく「碧い」という字を当てるあたり、なんかオシャレだなー!と子供ながらに思っていました。生理用品のCM曲でしたが、なぜ女性特有の商品のCMになることをOKしたんだろう、なぜこちらの会社さんは安全地帯を選んだんだろう、という色々気になってはいました笑。安全だからでしょうね…。CMもゴリラの被り物をかぶってKINGが登場していました。物語性の強いロマンティックな曲です。 - 合言葉
…意外と、割と激し目の曲です。Wikipediaによると、松井五郎さん曰く、KINGと石原さんの関係が悪化したことを受けて「合言葉」の歌詞を制作したとのこと。なになに?そんなに悪化しちゃったの?盛り上がっていたのに???という恋愛の激しさを感じさせますよね。 - こしゃくなTEL.
KINGが妻との関係を清算したことを聞き、松井はKINGの女性関係を茶化した歌詞として「こしゃくなTEL.」を制作
…へぇ〜笑。随分皮肉めいた曲だったんですね。LIVE映像などでこの歌を歌ってるKINGを見ると随分楽しそうです。 - 消えない夜
…途中に入るアコギがいいですね。武沢さんかな。こちらもKINGのファルセットが美しい曲。
恋愛がはじまり、周りには誰も味方がいない二人…的な感じなのでしょうか。 - 悲しみにさよなら
…消えない夜、からの悲しみにさよならへの入りが秀逸です。
他のアダルトな楽曲に比べると、明るくてポップな曲調です。老若男女に受け入れられる名曲です。 - 彼女は何かを知っている
…シングルカットされた「碧い瞳のエリス」のカップリング曲。この曲も結構激し目です。 - ガラスのささやき
…切ない曲。デリカシーの次にこの曲が割と好きでした。
フジテレビのドラマ「女は男をどう変える」のイメージソングだったとか。このドラマ自体知りませんでした〜〜!
この頃の安全地帯の曲って恋愛ドラマにむちゃくちゃ似合いそうです。
テレビドラマデータベースさんによると、社長の娘婿だった男(田村正和)が社長を後継したが妻に先だたれる。数年後、男はふとしたことで知り合った若い女性にひかれるが、実は専務の隠し子だった。初めはコミカルな導入部でよくある普通のコメディとして楽しませてくれるが、田村正和のダンディーぶりの魅力が随所にひかり、一方の鳥居かほりの若く一途な恋心が丁寧に描かれていくと、次第に二人の恋にシリアスな味わいが生まれ、次第に後戻りのできない切実な恋愛劇へと盛り上がっていく。ラストまで技巧らしき技巧が感じられないにもかかわらず、続きが見たくなるという、何度再見しても飽きさせない魅力あふれる布勢博一らしい恋愛劇の佳編。
とのこと。田村正和さん主演となると、見応えありそうですね! - ありふれないで
…ポップな恋愛の歌。本当にKINGが歌うと、曲に命が吹き込まれるというか。生き生きとしてくる感覚があります。
他の歌い手さんが歌っても、ここまで熱い恋愛の歌には聴こえないのではないかな。
そのくらい声に威力を感じます。
聴いているファンに「自分ごと」と思わせる恋愛「匂わせ」アルバムでもあった
先述の通り、松井五郎さんに言わせると、このアルバムの全曲が「KINGと石原さんの恋愛」から着想しています。
それはそれですごいことです。ネタが目の前にいたら、材料にするのは当然ですよね…。
ファンはその事実は当時知りませんでしたが、それでも加熱する報道で、どんな恋愛をされているのかは伝わってきていました。
と考えると。このアルバムは当時から「匂わせ」だったんですね!
「あなた」=「石原真理子さん」だと分かっていたとしても、その「あなた」が自分だと思ってしまう女性ファンが、当時は本当に本当に多かったんだと思います。
色褪せることのない珠玉のアルバム
『安全地帯Ⅳ』は、まさに安全地帯の魅力を凝縮した、色褪せることのない珠玉のアルバムです。
艶やかで情感豊かなKINGの歌声は、聴く者を一瞬で惹き込み、繊細なメロディと相まって心を震わせます。
オープニングを飾る「夢のつづき」から、聴き手は瞬時にアルバムの世界観に引き込まれ、続く「デリカシー」では洗練された色気と繊細な感情表現にうっとりと浸ることができます。
シングルヒットした「悲しみにさよなら」や「碧い瞳のエリス」だけでなく、「こしゃくなTEL.」「彼女は何かを知っている」といったアルバム曲にも隠れた名曲が揃っており、いわゆる"捨て曲"が一切見当たらないのも、この作品の特筆すべき点です。
特に、アルバム全体を通じた曲の並びには、まるで一編の短編映画を観るようなドラマティックな流れがあり、37分というコンパクトな時間の中に濃密な物語を感じさせます。
この流れの美しさが、単なるベスト盤では味わえない、アルバムならではの醍醐味を際立たせています。

当時の社会的な背景やKING自身のスキャンダルをも昇華させた楽曲群には、リアルな感情と物語性が色濃く漂い、時代を越えて聴く者に深い余韻を残します。
今なお、「日本のロック・ポップス界における最高峰」と称されるのも頷ける、完成度の高い作品です。
時を経てもなお、アルバムに込められた輝きは失われることはありません。
まさに、安全地帯を知るうえで欠かすことのできない、永遠のマスターピースと言えますね!
NEXT►【エピソード20】アルバムレビュー『ALMIGHTY』ALFEE(THE ALFEE)
次回は、1981年10月21日にリリースされた、THE ALFEEの転換期に生まれた『ALMIGHTY』をご紹介します。スタジオとライブを融合させた構成のアルバムです。
